「PM経験がない」と決める前に案件を見る

職務経歴書を書き始める前に、まず一つの案件を選びます。担当期間が長い案件や、実装以外の役割も担った案件が向いています。

見るのは役職名ではありません。誰に何を説明したか、どの判断を支えたか、問題が起きたときにどこまで動いたかです。 案件の体制図でSEと書かれていても、仕事の一部はPM・上流工程につながっているかもしれません。

ただし、経験をそれらしく言い換えるだけでPM経験になるわけではありません。自分が実際に担当したことと、自分以外が担当・決定したことを分けて整理するところまでが棚卸しです。

PMへの転向そのものを考え始めた段階なら、先にSEからPMへ移る前に確認したい役割と選択肢を確認すると、棚卸しの目的を定めやすくなります。

01

棚卸しは5つの欄に事実を書けば始められる

最初から整った文章にする必要はありません。次の表を使い、選んだ1案件について、実装以外で担ったことを中心に事実を書きます。実装経験も案件の前提として書けますが、仕様調整、影響調査、説明、判断支援などを掘り下げます。数字がなければ、関係者、変更前後、担当範囲を具体的にします。

棚卸しする欄書くこと
案件の前提目的、制約、自分の立場を書く
行動自分が調べたこと、伝えたこと、動かしたことを書く
判断自分で決めたことと、判断を支援したことを分ける
関係者と責任誰に影響し、どこまで責任を負ったかを書く
結果と次の経験結果、残った課題、次に担いたいことを書く

COPY & WRITE

案件の目的・制約・自分の立場:

自分が取った行動:

自分が行った判断/支援した判断:

関係者・影響範囲・負った責任:

結果・残った課題・次に積む経験:

02

仕様変更への対応を分解すると、実装以外の経験が見える

ここからは、運営者がSE・プロジェクトリーダー(PL)時代に経験した案件を匿名化して紹介します。対象は、自社製品をカタログのように紹介できるWebシステムです。営業担当者が顧客先で使うほか、一般の利用者や企業も製品仕様を確認できました。

運営者は開発チームのメンバーとしてPythonによる実装を担当しながら、PMの相談役・サポート役も担っていました。正式な肩書きは記憶が曖昧なため、この記事では仕事内容に基づいて「PL相当の立場」とします。

検索条件の追加は画面だけの変更ではなかった

顧客から相談されたのは、製品の検索条件を増やしたいという変更でした。画面へ入力欄を足すだけでは終わりません。検索に使う情報を保存するため、データベースの項目や構造にも手を入れる必要がありました。

そこで、顧客が望む挙動を先に整理しました。画面設計書、Pythonコード、データベースの構造、自動化していたユニットテスト、関連文書への影響を調べ、必要な工数を算出しました。

技術的な影響をPMが説明できる形にした

顧客との会話を担当していたのはPMでした。そのため、PMが内容を理解し、顧客へ説明できるように、運営者は変更の実現方法と影響を資料にまとめてPMへ説明しました。

顧客との合意後、プロジェクトでは増えた工数に合わせて納期を調整し、担当エンジニアのアサインを追加して対応時間を増やしました。仕様変更を含むシステムは問題なくリリースできました。

棚卸しする欄この事例で書けること
案件の前提製品を紹介・検索するWebシステム。Pythonによる実装を担当しながら、PMを支援するPL相当の立場だった。
行動製品の検索条件を増やす相談を受け、実現後の挙動を整理した。画面設計書、Pythonコード、データベース、ユニットテスト、関連文書への影響も調べ、工数を算出した。
判断仕様変更は顧客と合意して確定。運営者は、技術的な実現方法と影響範囲をPMへ説明し、判断と顧客説明を支援した。
関係者と責任PM、顧客、開発メンバーが関係した。運営者は仕様整理から影響調査、工数算出、PMへの説明までを担った。
結果と次の経験仕様変更の合意後、納期やエンジニアのアサインを調整してリリースした。次に積む経験として、顧客と直接調整する・説得する機会を増やすことを意識し始めた。

03

自分が担ったことと担っていない責任を分ける

この事例では、仕様整理、技術的な影響調査、工数算出、PMへの説明を本人の経験として書けます。PMが顧客へ説明し、双方の合意形成を進めたため、「顧客との合意形成を支援した」とも整理できます。

一方、顧客窓口として説明したことや、契約・費用を調整したことまでは本人の実績にできません。実際には別の人が担った業務や、記憶が曖昧なことまで職務経歴書に自分の実績として書き足すと、面接で詳しく聞かれたときに説明が崩れます。

整理できる経験断定しない責任
仕様と影響範囲の整理顧客窓口としての最終説明
工数算出とPMへの技術説明仕様変更案の最終決定
合意形成の支援契約・費用など営業上の調整

厚生労働省の職業情報では、PMは実行計画を作成し、予算・要員・進捗などを管理する仕事とされています。 IPAも、PMをプロジェクトの目的実現へ責任を持ち、単独またはチームの一員としてマネジメントを担う人と整理しています。 役割の境界を確認する参考にはなりますが、この基準に合わせるために経験を膨らませる必要はありません。

参考:厚生労働省 job tag「プロジェクトマネージャ(IT)」IPA「プロジェクトマネージャ試験」

04

足りない欄は次に積む経験として残しておく

5つの欄がすべて埋まらなくても問題ありません。空欄は、経験がないことを責める材料ではなく、次に何を任せてもらうかを考える材料です。

運営者は後に、この案件のPMを担当しました。振り返ると、PL相当の立場だった時期から顧客と直接話す機会を増やしておけば、引き継ぎはさらに進めやすかったと考えています。

  • 顧客との会話に同席し、自分の言葉で説明する
  • 自分の作業だけでなく、メンバーの状況と案件全体を見る
  • 遅れている作業について意見を出し、必要なら巻き取る
  • 実装中心の役割から、仕事の内容が変わることを理解する

資料の作り方や話し方、着地点の見定め方、相手の理解を確認しながら合意形成を進める経験が役立ちます。棚卸しは過去を整理するためだけでなく、次の役割に備えるためにも使えます。

整理した事実を持って、次の選択肢を比べる

まずは、5つの欄を選択した1案件で埋めてください。そのうえで、PMが実際に担う判断と責任と比べます。足りない経験を現職で増やすのか、技術専門職を深めるのか、転職を考えるのか。次の選択肢を考えるのは、ここからです。

初回の転職エージェント面談を控えている場合は、続けて面談前に整理する4つのことを確認してください。棚卸しした内容を、面談で伝えるための1枚のメモへまとめます。

第三者と一緒に求人や選択肢を探したい場合は、広告を掲載している転職エージェント活用記事も確認できます。先に棚卸しした内容を手元に置けば、紹介された求人が自分に合うかどうかを、自分の言葉で伝えやすくなります。